前哨戦・トライアルと本番の相関関係・考察
今年のG1で特徴的なのは、勝ち馬5頭すべて前哨戦・トライアルを好走していないという点だ。
高松宮記念を勝ったミスターメロディは阪急杯を1人気7着、大阪杯を勝ったアルアインは金鯱賞を3人気5着、桜花賞を勝ったグランアレグリアは年内は1戦も使っておらず中100日以上の休み明け、サートゥルナーリアもホープフルSからの長期休み明け。天皇賞を勝ったフィエールマンも1月のAJCCからの休み明けだった。
逆にトライアルを好走している馬は、ダノンスマッシュが1番人気ながら4着、モズスーパーフレアが2番人気15着、ダノンファンタジーが1番人気4着と人気を裏切る場面が目立っている。
トライアルや前哨戦というのは、本番と近い時期に同コース・または近い条件で行われる。
したがって、直近で好走しているので調子も良く、同条件で走っているので今回も好走できるだろうというのが、大方の馬券購入者の心理だろう。
当然人気にもなりやすく、桜花賞を例に見ると、グランアレグリアは新馬戦でダノンファンタジーに直接対決で完勝しているにも関わらず、1番人気はダノンファンタジーだった。
しかし、結果はご存知の通りグランアレグリアが圧倒的なパフォーマンスを見せ1着。
ダノンファンタジーは3着をも外す結果に。
競走馬のパフォーマンスにはその馬の記憶が大きく関係しているというのが持論であるが、そのことが前哨戦と本番でのパフォーマンスの上げ下げに大きく関係している。
本番との相性が悪いトライアルというのはいくつか知られている。
例えば、先週行われたばかりの日本ダービーの前哨戦・青葉賞はその一つだ。
青葉賞はダービーと同じコース設定の東京2400mで行われる。
ダービーと同じ青葉賞を勝ったのだから、その勝ち馬は同舞台に適性があるという風に考えることもできるだろう。
しかし、長いダービーの歴史上、青葉賞の勝ち馬がダービーを勝った例は一度もない。
青葉賞というのは2200m以上で行われる世代最初の重賞であり、GⅡということもあり強いメンバーが集まりやすい。
上記の条件から非常にタフになりやすいレースなのである。
競走馬のパフォーマンスには記憶が大きく関係していると述べたが、競走馬は新鮮かつ疲れの無い状態で一番のパフォーマンスを発揮する。
それに当てはめると、上記で述べたように青葉賞は非常にタフなレースで、好走すると非常に疲れるうえに、ダービーでは同じ条件で2走続けて走ることになり、馬の記憶的にも鮮度のない状態になる。
ただ、トライアルを好走してきた馬が全てダメかというとそうではない。
今年でいうと、桜花賞ではチューリップ賞2着のシゲルピンクダイヤが2着、皐月賞では若葉S1着のヴェロックスが2着に好走している。
同じことを言うようだが、新鮮で疲れの無い状態が競走馬が高いパフォーマンスを発揮できる条件である。
要はそれさえクリアできていれば、トライアル・前哨戦で好走していても本番でも好走できる。シゲルピンクダイヤ、ヴェロックスはそれをクリアしていたのだ。
シゲルピンクダイヤは桜花賞の2走前が11月、それも未勝利戦だった。
桜花賞では年明け2戦目かつ上級条件も生涯2戦目という、新鮮で疲れの無い状態だった。
ヴェロックスはどうだろうか。
若葉Sというのはトライアルながら重賞ではなく、強いメンバーが集まりにくい。
その弱いメンバー相手の少頭数のレースで、圧倒的1番人気に応え楽勝していれば、激走でなく疲れも残りにくいだろう。
また、若葉Sというのは皐月賞と同じゴール前で坂のある右回りの2000mである。
中山よりも坂はゆるく、小回りでもないので、皐月賞よりもタフなコース設定にはなっていない。
中山2000mと似た経験を得ることができ、本番ほどタフなコース設定ではないので、疲れも残りにくい。
もちろん青葉賞と日本ダービーのような全く同じコースを走っているわけではないので、馬の記憶の邪魔にもならない。
実際にヴェロックスのような馬は皐月賞で高確率で好走している。(ウインフルブルーム、ワールドエースetc...)
ここからは理論的な話ではなく推測も交えた話になる。
ここ数年外厩施設の話をよく聞く。
ノーザンファームしがらき、ノーザンファーム天栄というのは競馬ファンなら一度は聞いたことがあるだろう。
去年ぐらいから、休み明けで上記2つの外厩施設を使ってきた馬がG1を制すという場面をよく見るようになった。
アーモンドアイ、グランアレグリアは長期休み明けで桜花賞を制した。
アーモンドアイは桜花賞のあとも秋華賞やドバイシーマクラシックなど前哨戦を使わずぶっつけでG1を制している。
皐月賞を勝ったサートゥルナーリアも前哨戦を使わずに勝利し、大阪杯3着だったワグネリアンも前哨戦を使わなかった。
また、好走をできなかったものの大阪杯で1番人気のブラストワンピースも前哨戦をつかっていなかった。
最たる例はフィエールマンで、菊花賞、天皇賞春を史上最小キャリアで制している。
もちろん両レースとも前哨戦は使っておらず、休み明けでの勝利だった。
天皇賞春や菊花賞は長距離のG1レースで、非常に条件的にタフになりやすく、馬にも負担がかかる。
その2レースを好走後、調子を崩したり、その後活躍できずに引退してしてしまう馬は多数に上る。
それを考えると、フィエールマンの使い方は理にかなっている。
おそらくノーザンファーム陣営は気付いているのだと思う。
ノーザンファームというというのは競馬界では1番の影響力を持っているといっても過言ではない。
令和では強い馬は前哨戦を使わない、というのが常識になっているだろう。